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わたしはダニエル・ブレイク

@スカラ座

しばらくぶりに映画、そしてスカラ座。
なかなかうまく時間が合わなくて行けなかった。
この映画もそれほど「見たい!」と切望していたわけではないのだが
せっかく月曜日に行けるチャンスだし・・・

身につまされる映画でした。

大工のダニエル・ブレイク、老境にさしかかり、心臓の持病で医者から仕事を止められ“無職”。
「病気理由」なのでそれに当てはまる「支援手当」を申請するも
紋切り型のお役所対応で「あなたはこの手当を受けるほどの状態ではありません」と判定され
それなら、と持病で本当は働けないのに求職活動をする人のための「手当」を求めるが
それも「オンラインで」「サイト登録して」「決められた講習への参加と活動実態の証明」・・・
上から目線のお役所あるあるな感じが満載。
そこでやはり“あるある”な対応でけんもほろろな扱いを受けていたシングルマザーと知り合い
底辺でも生きなくてはならない人々の暮らしぶりが淡々と描かれる。

役所のやり方に腹が立って小さく爆発してみても
手続きをしなければ貰えるモノも貰えないので結局は言われた通りのことをする。
そんな諦めに似た空気が全体を覆っている。
気候と同じ、湿った感じなのである。
アメリカ人だとがむしゃらに突進して権利を声高に主張しそうだけど
イギリス人は力ずくでの正面突破が性に合わないんだろうな。
それにしてもイギリスという国は、前に見た「天使の分け前」でも感じたのだが
本当に下克上が難しい国だ。
でももっとずっと弱い人が手続きと書類と「待ち」の時間のあまりの長さに埋もれて
知らない間に消えて行くのはどこの国も同じなんだな。

そんな「普通」という強者スタンダードの中で生きるのに必要なことは
「自己の尊厳」なんですね。
たとえどんな仕事をしても、傍から見たら惨めでも、
「このためにこれをしているのだ」と自分自身を認めることができれば
それが生きていく理由になる。
そして、その尊厳の象徴となるものこそ「名前」なのである。
組み体操じゃないが、底辺の者たちが名前も何もひとくくりにされて潰れていったら
いずれ上も崩れるということ、ピラミッドの上の人達はわかっているかな。
我が国もそろそろ下の方が危なくなっている気がしますけど。
私が稀代の名作と思っているゴダイゴの「ビューティフル・ネーム」しかり、「ゲド戦記」しかり
“ひとりずつ(ひとつずつ)ひとつ" 名前によって自己が確立する。
だから「わたしはダニエル・ブレイクだ!」なのだ。



余談だが、この映画の英語が全然、ホントーに全然聞き取れなかった私。
ロンドンから来たという設定のシングルマザーに「ここの言葉わかる?」と聞くセリフがあって
ちょっと調べたら、この舞台となっているニューカッスルはものすごく訛りがキツイので
けっこう有名らしい。
私のアタマがちょっとお馬鹿になったわけではない・・・よね?




by quilitan | 2017-06-20 00:32 | 見る | Trackback | Comments(0)

猫と雑文ときどきお絵描き  


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