ホドロフスキーのDUNE

アレハンドロ・ホドロフスキーと、そこにかかわる尋常ではない才能の集まりによって
作られる “はずだった” 幻の超大作『デューン砂の惑星』。
そのいきさつを、ホドロフスキー自身が語るというドキュメンタリー。
久しぶりにパンフ買いました。

おお!この “ 作られなかった ” 「DUNE」の何という贅沢さよ!!

絵コンテを描いたのは、フランスのバンド・デシネで名を馳せたメビウス。
特殊効果を任されたのは、のちに「エイリアン」を作ったオバノン。
美術デザインにはギーガー(この映画公開直前に亡くなった・・・・)
出演者にはダリにオーソン・ウェルズにミック・ジャガー、音楽にはP.フロイド・・・
ホドロフスキーのほとばしるイメージが次々とそれに見合う人々を呼び込んでいく。

ホドロフスキーはまるで強烈な磁場を持った人のようだった。
この映画の中でも、自分の描き出す「DUNE」を語る語る、止まるところを知らずに語る。
“これはこうしたいんだ” “ここはこう描くんだ” と
表現することへの凄まじい熱波のようなものが吹き出して、こちらの脳を直撃する。
この熱気に巻き込まれて色々な才能が吸い寄せられたんだとあらためて感じた。
ギーガーの言葉が印象的だった。
「自分は原作をまったく知らないが、ホドロフスキーが全部話してくれたので問題はない」と。
原作のイメージではなく、彼の語る「DUNE」のイメージを描いたのだ、と。

本人も、毎朝必ずスピーチしていた、というくらいとにかく映画のイメージを語り倒していたらしいが
その時と変わらぬパッションでこのドキュメンタリーでも語っているのだ。
この人から「これができるのは君なんだ!」なんて誘われたら
ダリくらいぶっ飛んだ人間でなければ断るなんてあり得ない。

しかし、衣装、美術、絵コンテによるカメラワークまできっちりと決まった
厚さ10センチ以上にもなる設定資料本を作成したあと、肝心の撮影に入ることはなかったのだ。
そのイメージのあまりの自由奔放な強さに、算盤勘定がメインの映画業界は怖じ気づいたんでしょうね。

ホドロフスキーによる制作が頓挫したあと、この企画はD.リンチによって実現する。

「自分がやりたくてやりたくてたまらなかったのに他人に作られてしまった」映画を見るのが
悲しくてたまらなかった、と。
ホドロフスキーはリンチの才能を評価していたので、なおさらだったようだ。
劇場ではずっとうつむいていたのだが、見ているうちにどんどん気分が晴れていった、
なぜなら「これは失敗だ」とわかったからだ、と。
「これが人間の正直な感情だろ?」
こういうことが言えちゃうのもたまらないところだ。

ホドロフスキーは芸術家だ。
そして同じく創造し、それを形にする芸術家には賛辞を惜しまない。
但し、精神を伴わない「技術屋」には手厳しい。
その真っ直ぐさ、開けっぴろげさ、そして熱情。御年84歳と聞いてびっくりですよ。
300歳まで生きたいというが、ほんとうに生きそうなくらい若々しく、そしてなんといってもチャーミング!
目がキラッキラで、精神が肉体を作り上げる良い例だと思う。
息子の方がよほど落ち着いて、年相応だけど老けて見える。
これはね、みんな“たらされ”ます。
しかも猫飼ってるし・・・・・ふふ。


それにしてもメビウスの絵コンテ、素晴らしいなあ。
ああいう達者な人のラフ絵っていうのは本当にたまらない魅力がある。
そして「砂の惑星」、中学の頃に石ノ森章太郎が挿絵を描いていたというだけで手をだしたものの
巻末に独自の用語辞典まで付いていてあまりの難解さと面倒くささに辟易した記憶がある。
でも今回、主人公の名前とか、砂虫のイメージとか、自分では殆ど忘れていると思っていたのに
記憶が蘇ってきたのには驚いた。
ホドロフスキーのイメージでもう一度読んだら面白いかもしれない・・・・


「サンタ・サングレ」が好きだったのもこういう人が作ったからだったんだな。
84歳にして新作公開もあるし、楽しみだ。
このドキュメントももう一回見たいなあ(あ、ちなみに川越スカラ座です)。
トラックバックURL : https://kiliku.exblog.jp/tb/19913893
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by きゃるめら at 2014-06-20 09:20 x
失敗のほうを見たですよ(笑)懐かしいなあ。
もっとすごくなる可能性が明確にあるのなら
それだけでワクワクするけど
秘境は探検しないほうがロマンかな。
Commented by quilitan at 2014-06-20 10:36
失敗作、まさかリンチだったとは・・・好きな監督なのに。
ホドロフスキー版は未完成で完成、のようなパラドックスのある感じ。
設定資料が完成版?(笑)
だからそれが見たいんですよねえ!
by quilitan | 2014-06-18 23:09 | 見る | Trackback | Comments(2)

猫と雑文ときどきお絵描き  


by quilitan
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31