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きっと前世は・・・・

わけもなく惹かれるので、もう血の中に呼ぶものがあるんだと思うことにしている。

スペイン本国およびラテンアメリカの文学は私の心の滋養です。
もちろん網羅はできないけれど、努めて手に取るようにはしています。
その中でもやはり白眉となるのは Gabriel Garcia Marquez 
(そのわりに代表作を読んでいないというお粗末ぶりはまあご愛敬で)


その、ラテンアメリカ文学の巨星ガルシア・マルケスが先日亡くなった。
文学史上においての大損失を嘆くより、私がとっさに思ったのは


今こそ「ローマの奇跡」をDVD(Blu-rayでもいい)に!!


彼の作品は映像化されているものがとても多い。
そもそも、私が最初にマルケスに出会ったのも映画の「エレンディラ」だった。
主役のエキセントリックな美少女と、真っ青なケーキを頬張る老婆の印象的だったこと。
(その後、青いケーキは普通にあるのだと知った)
これがラテンアメリカ映画にはまるきっかけとも言える。

そして、私の一番好きな映画が「ローマの奇跡」!
公開されたのはもう20年以上前になるけれど、未だこれ以上の作品に出会っていない。
今まで観た映画の中で、セリフの一言一句を全て覚えたい衝動に駆られたのは
「太陽の王子ホルスの大冒険」とこの映画くらいだ。



コロンビアの小さな町で父と二人暮らしの小さな少女エベリアが
ある日突然父の腕の中で死を迎える。
本当に前触れもへったくれもないくらい唐突に訪れる少女の死。
そして数年を経て、墓地の改修の為に
一度埋葬した遺体をそれぞれの家族が引き出していく際に
父親は、埋葬されたときのままの姿をとどめる愛する娘を見出してしまう。

それからは、やれ奇跡だ、聖女に列するべきだという町の人々の後押しもあって
貧しい町から聖人の認定を受けるためにカトリック総本山のバチカンに向かう父と(棺桶の)娘。
お定まりの権威主義のバチカンに翻弄されながらも
寄宿するオペラ歌手志望の男の情けに助けられ
何より娘への愛情だけをよりどころに聖人の申請をするためにローマに留まる父親。
父親にとっては、娘が聖女になろうがなるまいが本当はどうでもよく
自分をローマに旅立たせてくれた村人達の善意に応えるためと
奇跡だろうとなかろうと、そこに生きているかのごとき娘がいる現実を
認めて欲しいという願いだけでバチカンに無意味な日参をするのである。
そして、ある日奇跡は起こる。
(ここで朗々と歌われる「人知れぬ涙」のアリアの美しいこと!)
権威もなにも飛び越えて、娘はその目を開き、父親と今まで通りの愛情を交わし合い
手を取り合ってバチカンとは程遠い騒々しい街中に消えていくのだ。
聖なるものは、死んでなお姿を変えなかった娘ではなく
実は父そのひとであった、という物語。


この映画、一体何度観たことだろう。
思い出したように単館にかかったりしていたので
上映されると聞いては足を運び、貪るように目に焼き付けた。
それほどに、私の中に深くくさびを打ち込んだ。
この作品に出会えたことを、本当に幸せに思う。
グアテマラで原書を見つけたときは嬉しかった。
ちなみに私、これと「ゲド戦記」と「磐面の敵」と「プラテーロ」は原書で持っている。
・・・読めようが読めまいが、"持っていたい"というやつです。

私の知る限り一度だけテレビで放映された。
その時に運よく録画できたものをお宝のように持っている。
元がビデオ録画なので今となっては画質もかなり落ちているだろうが
あるだけでも幸運というもの。

日本でも名の通ったマルケスが亡くなったこの機に
どこかの誰か、これをちゃんと形にしてはくれまいか!
こんな美しい作品が埋もれてしまっているなんてもったいないやら悲しいやら
もういちど陽の下に、と願わずにはおれません。




そういえば「美しい水死人」という短編も
モノクロ写真のコラージュでそれはそれは美しく、そそる本になっている。
まさに「美しい」水死人。
ただ、古書扱いで海外からなので買うにしても少々お値段が張る。
欲しいんだけどなぁ・・・
by quilitan | 2014-04-25 23:18 | 雑録 | Trackback | Comments(0)

猫と雑文ときどきお絵描き  


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