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Only Lovers Left Alive

「この世に二人だけ」という映画。

吸血鬼の男女(夫婦だけど恋人同士のような)の
長い長い永遠の時間の中のいっときをペダンチックに描くファンタジー。
二人の口に上る〈過去に関わってきた著名な〉作家や音楽家や政治家の名前に
ジム・ジャームッシュってクドカン的なオタクだな、と思ってしまった次第。



映像はとても印象的だ。
二人はそれぞれ時間の吹きだまりのようなモロッコと
自動車産業の隆盛で繁栄し、衰退の大波で夢の跡となったデトロイトに暮らす。
吸血鬼にとって、時間は自分の外側を流れていくもの。
窓越しの雨を見ているだけで濡れることはない。
まわりの変化とは混ざらない、過去の堆積物である生を持つ身に相応しく
時間の流れから置いていかれた、或いは脱落した街に住んでいるんだろう。

何か事件が起こるというわけでもなく
まあ若干二人をひりつかせるようなことは挟まれるけど
それもスペクタクルな危機となるわけでもなし
ただ、淡々と〈LIVE〉ではなく〈ALIVE〉が続くのだ。
淡々とね。
その辺が何となく岩井俊二を思い起こさせる。

そういう映画なので家で見たらきっと途中で寝るだろうけど
真っ暗な映画館のなかで、だるいプログレ系の音楽と変化のない映像で
漫然とした雰囲気に浸るのは嫌いじゃない。

何より、主役二人のいかにもな病的な吸血鬼がいい。
特に女優のティルダ・スウィントンの雰囲気は素晴らしい。
(調べたら「オルランド」の主演女優だった)
あの乾いた寂寥感はたまりませんね。
白くてカサカサ・・・そして美しい!
「世にも怪奇な物語」でフェリーニが監督した作品に出てきた
真っ白いお化けの少女に通じる "魔"の要素が感じられた。

諦めつつも、そのまま朽ち果てる気はさらさらなく
これからもまたいつまでも生き続けるんだろうな。

「ふたりだけで、この世の終わりまで」
by quilitan | 2014-04-12 12:35 | 見る | Trackback | Comments(0)

猫と雑文ときどきお絵描き  


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