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聖域 :篠田節子

夜になるとお猫様が騒ぎ出す春なので
腰を落ち着けてじっくり何かをやるということが
なかなかできにくい今日この頃。
そろそろ獣医さんかな〜・・・など考えつつ。

篠田節子は3冊目。
これは、お風呂読書で、読みかけで置くのがもどかしく
のぼせながらもついつい読んでしまった。
そのくらいページをめくらせる力があるということだ。
“主人公が虜になるほど強烈な小説内小説”が物語を牽引するという
かなりハードルを上げた設定を粛々とこなす、
まったく男前な作家さんである。
女の嫌らしい部分を巧くあぶり出す女性作家は多いけれど
この人は、嫌な男をちゃんと描ける数少ない人だと思う。

そして、以前読んだ作品でもつくづく感じたことだけれど
とにかく「偏らない」。
作家自身の価値判断を、決して作品に入れない。
特にこの作品では、信仰宗教や土着文化での死生観を扱っているので
ややもすれば、自分が考えていることや思想的な部分が
作品の姿を借りて浮き上がってきそうなものだが
そこをきっぱりと線引きしている。
そういう「テーマ」のようなものを作らないのだ。
必ず振り子が揺れ戻る、その筆力の強さは素晴らしい。


よく、“この作品のテーマとは”みたいな命題があって
それはすなわち“この作品では何が言いたいのか”になるのだろうが
言いたいことを作品で言っているようではダメなのだ。
作家にとって、「テーマ」というのは「言いたいこと」ではなく
「どういう物語が書きたいか」に尽きる。

こういう人がいたら面白いよね、
こういうことがあったら凄いよね、という
それらの断片を積み上げて構築する世界そのものがテーマになる。
当たり前といえば当たり前のことだ。
大昔の漫画教室で、「テーマを決めて作品を描け」と言われた呪縛が
ようやく・・・今さらながらに解けた気がする。
遅すぎるよ・・・


いずれにしても、今の所ハズレなしの篠田節子。
物語はやっぱり楽しい。
by quilitan | 2013-03-10 23:32 | 読む | Trackback | Comments(0)

猫と雑文ときどきお絵描き  


by quilitan
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