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あらためて、おおかみこどもの雨と雪

「河童のクゥと夏休み」がようやくケーブルで再放送された。

前回、最初は絵でちょっと引いていたのが
あまりに素晴らしい作品だったので
録画しなかったことを後悔したもんだった。
あんな、ちっとも可愛くない姿の河童なのに
見ているうちにどんどん愛おしくなってくる不思議。


で、比べてどうなるものではないけれど
同じ人外をモチーフにした「ドラマ」ということで
もう一度、「おおかみこどもの雨と雪」のもやもやを考えてみる。

     
  ***ネタバレします***






アニメーションが、「動くこと」「見せること」という
視覚表現であることを考えれば
この「おおかみこども・・・」はかなりの高みに達している。
冒頭の草花の揺らぎから、眼を見張ってしまう。

でも、物語としてはどうなんだろうか。

おおかみおとこが背負ってきた過去、花が背負ってきた過去、
その二人が出会い暮らした日々と、生まれた子供たちの未来まで含めて
本当は描かれなければいけない話なのにどれも中途半端になってしまった。


仮にもヒトの生き様を描くのであれば
表現として素晴らしいそれらの映像にも感情の裏付けがなくてはならない。
その人が、生まれてからの年月分だけ積み重ねて作り上げてきたものが
少しでも見えてこなければ、その人物は生きてこない。

でも残念ながらこの作品の登場人物にはその積み重ねが見えない。
それは風景の美しさや動きだけでは描ききれない。
だから誰も彼も、薄っぺらの紙人形なのだ。

たとえば主人公、父親の葬儀にも笑っていて怒られた、という
えらく細かい特徴付けをしておきながら
その理由が「お父さんにそういわれて育てられた」だけでは
ちょっと待って、納得できません。

いつもムッツリ不機嫌に怒っている山間の村の農家のお爺さんにしても
なんでいつまでもずっと不機嫌なのかちっともわからない。
主人公をどう思っているのか全然わからないのに
ただ「ひねくれじじい」という役割だけを押しつけられている。
菅原文太も私には違和感があった。

そんな風に、「設定通り」の枠から何一つはみ出さないから
感情的に共感できる部分がどこにもない。

そもそもこの監督のキャラクター、苦手なんだよね。
特に女子に関しては、「時をかける少女」も「サマーウォーズ」も
表面的でどうしようもない・・・・!!
それでも、「サマーウォーズ」が好きなのは
きっとこの人の映像センスが100%生きた設定だったからなんだろう。
あれは時間的にも空間的にもものすごく限定された世界での出来事で
キャラクターたちの「その前」も「その後」も描かれる必要がなかった。
タイトル通り、「サマーウォーズ」の主題は「戦い」。
圧倒的な映像パワーに、キャラクターの弱さも吹き飛んで純粋に楽しめた。
「時かけ」にしても主題は「少女」だから
少女さえハツラツと時を駆け回っていれば作品としては成立する。
(個人的には好みではありませんが)

今回はそういうわけにはいかないものを選んだのに
結局同じような作り方をしてしまった。
この監督は《ひとつの世界》を作るのはとても巧いのかもしれないが
人間の目線で描くものに関しては今ひとつなのかもしれない。


・・・・・・と、まあいろいろ御託を並べましたが・・・・・
この映画がどんなに素晴らしかろうとも
ただこのシーンがあるだけで私はもう見ないと思います。

      街なかの川で死んだ狼(おおかみおとこ)をゴミ収集車で処理する

何のためにこのシーンを作ったのか理解に苦しむ。
それに妻は目の前で愛する夫がゴミ収集車にいれられるのを
何でもっと強引に引き取らないのか!?
機械につぶされるのを見てただ泣くだけなんだよね。
しかもすぐに立ち直るんだよね!!!
もし、うちの猫が間違ってそういう目にあったとしたら(考えたくもないが)
私は泣いて縋って止めます。
もし止めきれなかったら精神的におかしくなる。
少なくともしばらくは後悔の念で泣き暮らすだろう。

それだけ色々な感情が発生しかねないシチュエーションなのに
ヒトの残酷さを出したかったのか
ヒトとケモノは相容れないということを表したかったのかわからないが
あまりにも安易な使い方に唖然とした。
しかもその後、妻は普通に前を向いて子育てだ。
おおかみおとこよりも妻の方がよっぽど野生でしょう。

      
      現実の話として、路上の大型動物の死骸の始末を役所に頼むと
      わざわざ生ゴミ収集車を出すのだろうか?
      動物が生ゴミ扱いなのはわかっている。
      でも、ゴミ置き場に既に捨てられていたのならいざ知らず
      目の前で引き上げられた大きな死骸を
      収集の人が機械に放り込むとは思えないのだが・・・・
      



男が考える、理想的な強い女の物語か・・・・・
Commented by pinalili at 2012-08-21 09:27 x
我が家の勝手口側の道路上にカラスの死骸発見!
すぐさま清掃局に電話して引き取りに来てもらいました。
清掃車できたわけではありませんでしたよ。
オオカミに比べれば小さいけど、、、、。
この映画見ようかどうか思案していたんですがやめます。
Commented by quilitan at 2012-08-21 18:14
カラス!でもけっこう大きいですよね。

ほんの一瞬のシーンなので
それで決めつけるのもどうかと思いもしましたが
やっぱりダメなものはダメ。
“感動して泣いた”という意見も確かにありますけどね。
映像はいいんですがねえ。
Commented by kirin at 2012-08-22 22:48 x
人権擁護委員会が推薦している……ってところで、怪しい香りが
漂っていますわ。とつぶやいてみる。
ジンケンガーと叫ぶ人達は、左巻きか、あちらの国の方々ですから。
quilitanさんの嗅覚はまちがっていないと思います。
Commented by quilitan at 2012-08-22 23:46
ポリティックな嗅覚は私はないですよー。
ナントカ省推薦とかナントカ協会推薦というお墨付きは
映画でも本でも昔から無視してますし。
単純にケモノ飼いとして、あのシーンが納得できない感性だった
ということです。
Commented by おおかみこどもファン at 2015-05-10 16:32 x
ああいう場合、自分の飼い犬だと立証出来ないなら、ゴミ扱いされます。
首輪を巻いていたりチップとかが埋め込まれていたら、立証出来ますし。回収する行政も、ゴミ収集でなくて、遺失物として警察となります。
劇中の事例では、首輪が無いのは元より、そもそもが、彼は、花の夫です。
正直に語れば、狂人扱いです。
どうしようもない状況と言えますでしょうね。
by quilitan | 2012-08-19 00:20 | 考える | Trackback | Comments(5)

猫と雑文ときどきお絵描き  


by quilitan
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