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「悪人」

久しぶりに1800円出して映画を見た。
これは、理由もなくそれでも良いような気がしてた。

見終わった後の気持ちがとてもいい映画だった。
とても好きなタイプの映画です。
原作も読んだ方が更に良いのかもしれない。
でも、映画としてこれは完成されているものなので
敢えて読まなくてもいいかな、とも思う。

ただ、評価と矛盾するかもしれないけど
「絶対見た方が良いよ!」とは言わないでおきたい。

見ながら、どこか普通の日本映画と違うような気がして仕方なかった。
日本の、大都市から外れた町にありがちなうすら寒い風景や
閉塞感漂う日常の営みとか人の生き方とか
どう見ても現代日本の点景が溢れているんだけど
なぜか「外国映画」を見ている気分だった。
しかもハリウッドじゃない、私の好きなラテン映画ね。
それが「絶対オススメ==!」と言わない理由です。
見たいな、と思う人が見るべき映画のような気がするのだ。





この、あまりにも日本的風景の中での物語なのに
日本じゃない、と思わせるのは
やはり監督が在日2世(3世?)ということが関係しているのだろうか。
もっと言えば、監督はクリスチャンなんだろうか。
明確な宗教を持っていないとしても
そういう土台を内部に持っているのかもしれない・・・いや、あくまでも推測です。

なぜなら、この映画って「悔いと赦し」の物語だと思うのだ。

犯罪者=悪人、という単純な図式だけでいいのか?というのが
この作品(多分原作も)の主題のようなんだけど
勿論それを踏まえつつ、でももっと突き詰めれば
罪を犯したことを悔いて、赦しを求める気持ちがあるかどうか
そこに善と悪の決定的な分かれ目を描いているんじゃないかと思ったので。
それが法的に裁かれるべき罪であろうと
ほんの些細な悪戯や意地悪程度のものであろうと
罪を自覚して赦しを請うことこそ善だろう?と
問われているような気がしたんだよね。
悔いている人とそうでない人が見事に象徴的に描かれてます。
だから・・・ある意味寓話というか、お伽噺的な感じがあるので
その辺も日本映画っぽくないのかもしれない。

最初に会っていきなりホテルに行ったときは
それこそイマドキな出会い系の目的で男は女の顔も見ずにやっちゃうわけだけど
でもお互いに「あなたと私」という関係になった後はちゃんと眼を見て、
っていうのも結構印象的だった。
総じて、そういう象徴的な描き方しているので
役者さんの力量に総てが掛かってくるようなところがある。
表情一つで監督の意図するところを観客に伝えなくちゃいけないんだ。
顔だけアップとか、背中のアップがものすごく多い。
奇をてらった演出がなくて、まさに正攻法で真正面から向かっている。
その辺の緊張感もすごく映画の質を高めたような気がする。

妻夫木聡は、この役に相当入れ込んでいたというのに相応しく
見事に役に自分をはめ込んでた。
すごく良かった。
舞台挨拶で感極まって泣いてたのをTVで見たけど、わかるよ。
深津絵里も一皮むけた感じ。
それと岡田将生くん・・・見る度に、ホントにうまくなったねえ!と
オバサンはつい褒めちぎってしまうのです。
伸びたなあ・・・・・しみじみ。
あんな、イヤ〜〜〜な性格を演じられるようになったなんて!
やっぱり最初にクセのある監督にしごかれたのが生きているんだなあ。
樹木希林と柄本明はもう何も言うまい。


ラストの、夕陽を見つめる主人公が大写しになった顔を見たとき
彼が心の中で「神様」と言っているような気がした。
   それはもちろん特定の神ではなくて、
   なにか「感謝すべきもの」「畏敬すべきもの」「自分を許してくれるもの」としての神様。
「悪人」というタイトルはまさに反語的なもので
とても清い映画だと言えるんじゃないかな。
by quilitan | 2010-09-29 00:44 | 見る | Trackback | Comments(0)

猫と雑文ときどきお絵描き  


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