みんな、あの人があたしの好きな人よ

    くらもちふさこ 手塚治虫文化賞大賞受賞

嬉しい。
何より一番新しい作品での受賞ということが嬉しい。
気になったもの、心惹かれるもの、その感情を、物語を〈どう見せるか〉と
ひたすら模索しながら試行錯誤を繰り返して作品を生み続けていることが評価されたということだから。
試行錯誤の結果が全て成功ではないかもしれない。でもその歩みが止まることはない。
そして成長を続けることこそが "作家" なのだ。


『花に染む』をきっかけにして私は弓を始めた。
始めたらこれが面白くて今や私の生活の一部である。
弓は、「道」といいながらもついつい自分も教える側も “中てる” ことに気が行きがちで
本当はかなりウェイトが置かれるはずの「気」の領分が後回しになる。
でも精神論などというと胡散臭さが勝って、技と気をうまく同和させるのに時間がかかり
続けていくことで、初めて分かってくることがたくさんある。
それが、確かに弓は数回引いてはいるだろうし、弓道場にも何度か足を運んでいるとはいえ
実際に「弓道」というものに接することなく想像力によって描かれたものが
それこそ的を射ているのである。
まったく別の方向からであっても、まっすぐ本質を突くのだ。
これがイマジネーションの力。

弓道の教えのひとつとして『形の美しさは真であり、真のものは形も美しい』というのがあるが
これは何も弓道に限らず、真理だと思っている。
但し、「美」とか「真」とかただ字面通りの意味合いではなく、だ。
作品の中で練り上げられた〈見せ方〉という「形」が美しいから、表現手段として嘘がないから
受け手側の心に真っ直ぐはいってきてしっかりと根を下ろす。

勿論、テーマもストーリーも作品には大事な要素ではある。
でも、漫画でも映画でも絵画でも、見せるという表現手段において「見せ方」というものがどれほど重要か。
この「見せ方」を突き詰めることは、教わったりするものではなく
モチベーションとして初めから持っているもので、知識や経験では後付けできない。
それを「才能」と呼ぶのだと思います。



時を合わせたかのように、つい最近「文藝別冊くらもちふさこ」というムック本が出た。
その中で、様々なひとが今までの作品で印象に残ったシーンやセリフを挙げていたのだが
同じシーン、同じセリフを心に刻んでいる人の何と多いことか。
しかも今もそれが色褪せていないのがありあり。
言うまでもなく私も読みながら、そうそう、そこだよ!みんなそうなんだね!と
本を相手に相槌を打つことしきり。
冒頭の加南のセリフなども折に触れ頭に浮かんでくるものだけれど
ここは陽大に締めてもらおう。


『えー    泣いてる?』

喜んでるんだよー!


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Commented at 2017-04-26 11:56
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by quilitan at 2017-04-26 21:04
「中のヒト」があれこれ書くことに自分としてもちょっと抵抗があったのでずっと抑えてました。
解禁♪
by quilitan | 2017-04-25 11:18 | 雑録 | Trackback | Comments(2)

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