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友だちのパパが好き

@川越スカラ座。

まず・・・イラッとします。
でも色々反芻しているうちに、これは非常によく作られた作品なのだと思い至るのだ。



大学に入ったばかりの娘と、父親が外に女を作ったせいで離婚を決めている両親。
娘の友達はアラレちゃん眼鏡の不思議ちゃんで、これがパパを好きになる子。
その元カレ、高校時代の先生のようで、これまたストーカー気質のあぶないおじさん。
父親の浮気相手。
母親に言い寄る勤め先の男。
娘の彼氏。

出てくる人物は全てそれぞれ相手との関係の他に個人的に事情を抱えている。
たとえば母親は病気が再発するかもしれないという爆弾を抱えていたり
父親の相手は早くも妊娠してしまい、などなど。

そして誰一人、感情を言葉にしない。
会話の殆どは

  え、 あ、 うん、 えーっと、 ああ、 あ いや、 あ まあいいや、 いえ別に・・・

説明するのめんどくさい、っていうのが理由の大半だろうけど
それぞれが相手の思惑を量りながらいわゆる“大人”の忖度でお茶を濁す感じで
そちらも言い出さないし、と本心を包んで会話しているのでイラッと来る。

それと対照的に唯一感情をストレートにぶつけまくっているのがアラレちゃん眼鏡。
彼女だけは本当に言い淀みが全くない。
そして常に人の目を真正面から見て自分の気持ちを言葉にする。
言葉にするくらいだからもちろん暴走する。
悪いけど、動物同士でまともに目を合わせるのはケンカする意思表示だからね。
そして彼女は自分のために誰かを好きになっているので、「好き」という気持ちはまったく伝わってこない。
これまた苦手な人種なのでイラッと来る。

でもこの対比は巧いよなあ。

実はところどころでアラレちゃん以外の人たちも
自分の気持ちをきちんと言葉にする必要があると感じているフシがあるのだが
ずっと醒めたやりとりをしているので、いきなり転換は出来ないというのも分かるようになっている。
この辺も巧さを感じる。


最後にストーカー男が起こす刃傷沙汰で、ギリギリで助かった父親に対し
娘、母、浮気相手は相変わらず諦めのような淡々とした態度でいるのだが
そこでなぜか父親だけは暴走するアラレちゃんに引きずられるように感情をほとばしらせるのだ。
カッコつけていうと、父親だけが淀んだ日常から飛びだして鮮やかな色彩の中に生まれ変わったと。
でもこの先どうなるのかは知ったことではない、とでもいうように
結局“バカは死んでも治らない”タイプのバカップル誕生で終わり。
これはハッピーエンドなのだろうか?


想像していたより面白かった(もっとドタバタかと思っていたので)けれど
とにかく誰にも感情移入がまったく出来ないので、好みの作品ではないですね。
そして「あんなヤツら不幸になればいい」というイヤな気持ちを抱かせるような後味の悪さがあるなあ。

とても練られた作品であることだけは確かだと思います。



***

まだしつこくあれこれ考えているのは、あれ、もしかして好きなのかも?ということなのかしら。
いやいやそうではなくて。

この映画、「ヨハネが好き」などの頃の大島弓子さんの感じに近いのだ。
こういう妙に突出したキャラクターいっぱいいたいた。
(たいていは「お母さん」みたいな緩衝材がちゃんとあったけどね)
でも漫画なら声も出ないし、当然“漫画の絵”だしでエキセントリックな人物はおおいにけっこう。
ただ人間がそのまんまやると生々しすぎてちょっと・・・
by quilitan | 2016-05-13 19:57 | Trackback | Comments(0)

猫と雑文ときどきお絵描き  


by quilitan
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